小さなあけびの絵
2020.09.25秋は、様々な果物が実るので、私にとっては描きたいものがたくさん出てきます。
特に、山でしか採れないのもは貴重で、山を持っている知人がわざわざ届けてくれたりしたものでした。私が絵を描くということを方々で知られてからは、いろんな人が珍しいものをわざわざ山から届けてくれて、それを描くのがとても楽しみになっていました。
描きたいと思うものは、とても素朴なもので、下の絵などは、鳥がつついたのでちょっと崩れているアケビの絵なのです。アケビは熟してくると鳥がやってきて食べるんだそうです。確か一度個展で展示してから、しまい込んでいました。
それが、今日、自宅から出てきたので、額装してみました。
左の実の中に種が見えていますが、これが鳥がつついた跡です。
山のあけびは、こんな風に汚い茶色で、なんだか風情があります。
紫色のは、山では奇跡に近いほど見つからないもののようです。
しかし、私にとっては外側のごつごつした無骨な感じと中の果肉の半透明感の対比が美しく、描きたいと思わせるのに十分なモチーフでした。
この後、数点のアケビの絵と、さらにB2サイズのアケビの絵、そして、AKEBIⅠ AKEBIⅡと横長の絵の2連作へ続くきっかけとなるのですが。
この絵は、その序章とも言える最初の1作に近いと思います。
サインも初期のサインが入っていまして、恐らく2014年かもっと前の作品だと思います。
アケビにとりつかれて、秋になると山を持っている方にお願いして頼んでおいたり、皆で取りに行ったり・・・。絵にするまでにアケビ探しが楽しいのです。
親戚に山を持っている人がいて、アケビを頼んでおいたら、描き切れないほど大量に収穫しておいてくれたので、びっくり仰天したことがありました。
そのため、最初は、こんな小さな絵から始まり、だんだん大作になっていったのです。
この売れるわけでもない茶色いアケビの絵にとりつかれて、大作を描いては作品展会場から戻ってくる始末・・・
売っているアケビというのは、通常薄紫で、茶色のアケビは人気が出なかったのかもしれません。
それでも懲りずに茶色いアケビを描いていたら、コレクターの方からのご紹介で、ある方よりアケビの大作のご依頼がありました。それは、なんとベッド幅まで大丈夫という話で、びっくり仰天してしまったのです。
ベッド幅とは、ソファー幅より長いたぶん200㎝まではOKというなんとも奇想天外なオーダーで・・・・
あけびはつるが長いので、それは理想的な注文でした。
あけびを描ける幸福感に包まれて、1作でよいのに2作描いてお届けし、そのうちの1点をすぐに気にいってもらえました。
残りの1作は、その後、絵の幅が問題となり、断念される方もいらっしゃったようですが、昨年、横浜タカシマヤでついに売約となり、私の思いは届いたのでした。
今回、久しぶりに出てきた最初の小さな作品を自分のギャラリーに飾り、秋のWEB展覧会の仲間入りができました。
絵は一期一会
みんなに好かれる絵ではなく、売れなくても好きで描き続ける絵があります。
しかし、伝わるときは、どすんと伝わってしまうので、ベッド幅となる・・・
田舎にしかない美しいものがあり、
こんな絵を描くのが本来好きな画家であったというお話でした。